型紙ベースモデリングとクロスシミュレーションによるリッチなダンス表現:アニメ『ワンダンス』におけるサイクロングラフィックスのMarvelous Designer実践

2025年10月より放送されたアニメ『ワンダンス』は、ストリートダンスというユニークな題材に挑んだ作品です。制作を手がけたサイクロングラフィックスは、ダンサーの激しい動きと、ストリートウェア特有の「ルーズ」で多彩な衣装バリエーションのリアリティを両立させるため、Marvelous Designerの採用は「必然」だったと語ります。
高速で正確な物理シミュレーションにより、従来の手法では不可能だった「圧倒的なデザイン数」と「正確な衣服の挙動」を実現し、画期的な工数削減を達成。
また、Marvelous Designerに由来するリアリスティックなシワの情報を、Blenderを活用して「アニメらしいルック」へと落とし込む独自の技術調整や、「動いている状態こそが、その衣装の完成形である」としてダンス中のシルエットを追求した制作アプローチなど、技術的な挑戦の裏側を深掘りします。
デジタルファッションの造詣が深い株式会社典樹との連携や、Marvelous Designerがアニメ制作全体の可能性をどのように広げるかについても伺いました。
1. ストリートダンスとMarvelous Designerについて
『ワンダンス』はストリートダンスに特化した非常にユニークなアニメ作品であるといえます。
今回のプロジェクトでMarvelous Designer (MD)を採用した理由は何ですか?
Marvelous designerの高速で正確な物理シミュレーションは、これまで3DCGで苦手としてきた、
重力感のある動きやリアルな皺のディテールを与えてくれました。実際に使用してみた感想として、他の3DCGソフトによる物理シミュレーションに比べても、大幅に後処理の修正作業を軽減してくれています。
『ワンダンス』の制作において最大の挑戦は、膨大なダンスアニメーションと並行して、ストリートファッションのリアリティを追求した多彩な衣装バリエーションを揃えることでした。従来の3DCG制作では、衣装ごとにモデリングを行い、さらにウェイト調整やリギングといった膨大な工程を繰り返す必要があります。しかし本作では、これらをすべてMDによる3D縫製で制作しています。

MDによる物理シミュレーションを導入したことで、複雑な手作業を繰り返すことなく、ダンサーの激しい動きに連動した正確な衣服の挙動を実現しました。これにより、これまでの手法では不可能だった圧倒的なデザイン数と、リアリティのあるシミュレーションの両立が実現したのだと感じています。
また、3D縫製は「着せてからのサイズ調整」が容易なため、ヒップホップ特有のダボっとしたシルエットの微調整もスムーズに行えました。ダンスのシミュレーションを通じて、動いている状態のシルエットをリアルタイムに確認できる点は、制作における大きなボーナス(利点)になりました。
今振り返れば、『ワンダンス』という作品において、MDの採用はむしろ「必然」であったと確信しています。
2. リアリスティックさとアニメ的表現のバランス
Marvelous Designerはリアルな物理演算による衣服表現で知られていますが、アニメーションには達成したい表現に対して「調整された」ルックが求められると考えております。この2つのバランスをどのように取りましたか?
(シミュレーション結果がリアルすぎて汚く見えないよう、シワを簡略化したり、アニメらしい見た目に合わせてパターン(型紙)の特殊な調整を行ったりしましたか?)
『ワンダンス』におけるモーションキャプチャーのコンセプトは、「ダンサーが描くアニメーション」です。ダンスの躍動感だけでなく、服のシワひとつに至るまで、すべてはダンサーの動きから生み出された表現でなければならないと考えていました。
MDは、非常にしなやかでリアルな服のしなりを再現してくれますが、そのままではアニメ的なルックに対して情報量が多すぎます。そのため、あえて「シワの数を整理する」という調整が必要でした。
このルック調整の鍵となったのが、本作のメインツールであるBlenderです。MDで生成されたリアルなシワの情報をそのまま使うのではなく、Blenderのジオメトリノードを活用しています。元の法線(ノーマル)にブラーをかけた情報をアトリビュートとして保持、それをシェーダーエディタ側で呼び出して制御しています。
MD由来のリアルな挙動を活かしつつ、作画と馴染みの良い「アニメらしいルック」へと落とし込むことができました。

また、『ワンダンス』におけるMDの活用で特徴的なのは、「ダンス中の動き」をすべての基準として調整している点です。通常の衣装制作では、直立した状態(TポーズやAポーズ)での見栄えを優先しがちですが、本作ではあえてそれをしません。服のたるみや丈の長さ、ボリューム感に至るまで、あくまで「踊っている最中にどう見えるか」という一点に特化して調整を重ねています。
ダンスの激しいステップや大きなアクションの中で、最もカッコよく、かつ美しいシルエットが描かれること。
「動いている状態こそが、その衣装の完成形である」という考え方は、ダンスをテーマにした本作において、むしろ必然的なアプローチだったと言えるかもしれません。シミュレーションの結果をただ受け入れるのではなく、ダンスの躍動感を最大化するために、常に動きを確認しながらシルエットを追い込んでいきました。
3. 激しい動き(ダンス)の制御
キャラクターたちは高速の回転やジャンプなど激しいダンスを披露し、しかもパーカーや重ね着といった難易度の高い衣装を着用しています。こうした激しい動きをシミュレーションする際、最大の課題は何でしたか?
幸いこの配慮が必要な衣装は多くはありませんでしたが、『キャラクターデザインから大きくはずさないこと』が課題でした。具体的には、パーカーのフードはダンスの最中に頭に被ることはあっても被り続けてはいけない、シャツの裾は跳ね上がる瞬間はあっても上がったままではいけないなど、激しい動きの後の衣装の大きなくずれ(それが物理的に正しいとしても)を防ぐためにピンやタックを多用しました。
【追加質問】
ストリートダンスにおいて、服の揺れ方はダンサーの個性の延長とも言えます。キャラクターごとのダンススタイルの違いを反映させるために、布の物性設定(重さ、摩擦、厚みなど)を個別に調整されましたか?
(例:アグレッシブなダンサーには重めの布地を、流れるような動きのダンサーには軽めの布地を設定する、など)
キャラクターデザイン(ジャージ・トレーナー・デニムなど)に合わせて生地を選ぶことを重視して、動きの調整は主にパターンで行いました。クロスシミュレーションの多種で複雑なパラメーターは調整に時間がかかり過ぎることが多いので、プリセットにはたいへん助けられました。
4. 株式会社典樹との連携
今回は、デジタルファッションの造詣が深い株式会社典樹と協力して衣装パターンを制作されたと伺いました。このパートナーシップは、Marvelous Designerでの制作プロセスをどのように強化しましたか?
また、従来のCGアセットのやり取りと比較して、スタジオ間で「MDのプロジェクトファイル」を共有することによる独自の気づきや、ワークフロー上の利点はありましたか?
実はMarvelous Designerを組み込んだフローの一番の難関は「縫製(パターン)」という考え方でした。これまでモデリングから衣服を組み上げていたので、これまでまさか型紙の知識が必要になるとは思っていませんでした。


ことMDの衣装パターンにおいては、典樹さん抜きには語れません。なにせ、我々は服の作り方を学ぶことからスタートするレベルでしたから。アニメの衣装設定をもとに典樹さんに膨大な衣装パターンを作成していただきました。
5.アニメーション表現の拡大と展望
今回のワークフローでの成功を経て、Marvelous Designerのようなツールは今後のアニメ制作をどのように変えていくと思われますか?(アクション重視の作品や、ファッションに焦点を当てたアニメを作りたいクリエイターにとって、新たな可能性が開かれると思いますか?)
今回のワークフローを経て、MDのようなツールは、ファッションに特化した作品のみならず、アニメ制作全体の可能性を大きく広げると確信しました。
特に、リアルな群衆シーンや合戦、激しいバトル描写などにおいては、表現のクオリティを高めつつ、制作負荷を劇的に軽減する極めて有効な手段となります。「ツールで効率化できる部分」を最大化できれば、その分、演出や作画といった「真にカロリーを割くべき工程」にリソースを集中させることができるからです。
また、MDを使用して驚いたのは、高度な物理シミュレーションを行っているにもかかわらず、オペレーションが非常に軽やかでレスポンスが良い点でした。この直感的な操作感こそが、試行錯誤を繰り返すクリエイターの想像力を妨げず、結果として表現の質を押し上げてくれるのだと感じています。
【追加質問】
今回の経験から見て、従来の手法と比較した場合の「アニメーション制作におけるMarvelous Designerを利用する上での最大の利点」はどこにあるとお考えですか?
『ワンダンス』という作品において、Marvelous Designer(MD)がなければ、あの膨大なダンスシーンと衣装のバリエーションを両立させることは不可能でした。それほどまでに、制作現場に与えたインパクトは絶大です。
従来の手法との決定的な違い、そして最大の利点は、「アクションやファッションのディテールを妥協することなく、より純粋に『描きたいビジョン』へ挑戦できること」にあると考えています。
これまでは技術的な制約や工数の問題で諦めざるを得なかった表現も、MDがあれば形にできる。クリエイターが「本当に見せたいシーン」に妥協せず突き進める環境を与えてくれることこそが、このツールを採用する真の価値ではないでしょうか。
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이 작업은 Animation, Avatar, Blender, Simulation, Pattern, Dance 등의 기술로 제작되었습니다.
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